文書番号 : S1110278035232 / 最終更新日 : 2024/09/09印刷する

画像の一部または全体の色が変わったり横スジが入る現象(フリッカー現象)を低減して撮影する方法

    照明の明滅により撮影画面に横筋が写り込んだり、画面の一部の色合いが変化してしまう現象のことをフリッカーと呼びます。
    フリッカーが発生する理由については以下のページで詳しく説明しています。

    フリッカーの影響を低減するには、いくつかの方法があります。

    * 搭載されている機能はカメラによって異なります。カメラのヘルプガイドでご確認ください。

    目次


    [電子先幕シャッター]を[切]にする、またはシャッター方式を[メカシャッター]にする(静止画)

    電子先幕シャッター設定のできるカメラで[電子先幕シャッター]を[切]にする、またはシャッター方式の設定できるカメラでは[メカシャッター]を選択するとフリッカーを低減して撮影できます。

    シャッタースピードを変更する(静止画/動画)

    シャッタースピードを変更することで、フリッカーを低減することができます。
    フリッカー現象を改善するためのシャッタースピードの設定はご使用の地域によって変わります。
    電源周波数が50Hzの地域では[1/50]または[1/100]に、60Hzの地域では[1/60]または[1/120]に設定することをおすすめします。


    • シャッタースピード 1/200 s

    • シャッタースピード 1/50 s

    [フリッカーレス撮影]機能(静止画)または[高分解シャッター]機能(静止画/動画)を使う

    フリッカーは明滅している照明光をフォーカルプレーンシャッターで撮影することにより、画面の位置により点灯した瞬間と消灯した瞬間が写し込まれることにより縞模様になって撮影される現象です。
    フリッカー現象を低減させるには、[フリッカーレス撮影]と[高分解シャッター]の2通りあり、それぞれ効果のあるシーンが異なります。

    特徴および撮影条件 フリッカーレス撮影 高分解シャッター
    特徴 フリッカーによる影響が少ないタイミングを、カメラが自動で検知して撮影します。 モニターで確認しながら、フリッカーによる影響が少ないシャッタースピードに手動で合わせて撮影します。
    お使いの機種によっては、フリッカーによる影響が少ないシャッタースピードを自動で合わせて撮影します。コントロールホイールの中央を押すことで、フリッカーを自動検出し、除去します。
    静止画/動画 静止画のみ 静止画および動画
    シャッター方式

    メカシャッター(ILCE-1では電子シャッターでも可能)

    メカシャッター*1および電子シャッター

    露出モード

    P(プログラムオート)/A(絞り優先)/S(シャッタースピード優先)/M(マニュアル露出)

    S(シャッタースピード優先)/M(マニュアル露出)/[フレキシブル露出モード]でシャッタースピードがマニュアル

    対応しているフリッカーの種類 100Hz/120Hzのフリッカー(蛍光灯など)のみ *2 100Hz/120Hzのフリッカー(蛍光灯など)および100Hz/120Hzより高周波の高いフリッカー(LEDなど)


    *1 メカシャッターでの撮影時は、シャッタースピードが速いほど撮影前のモニター表示と撮影される画像の見え方に差が生じやすくなります。必ず撮影された画像でフリッカーの影響が低減していることを確認してください。

    *2 [フリッカーレス撮影]を[入]にしていても、100Hz/120Hz以外の周波数のフリッカーをカメラが検知することはできません。

     

    [フリッカーレス撮影]と[高分解シャッター]についてさらに詳しく解説します。それぞれの特性をご理解の上、フリッカーが軽減される適切な設定をお試しください。

    [フリッカーレス撮影]機能(静止画)を使う

    100Hz/120Hzで明滅するタイプの蛍光灯の場合、明るく点灯している期間の方がメカシャッターのスリット走行時間(またはILCE-1の電子シャッターの走行時間)よりも若干長いので、タイミングを見計らってシャッターを走行させることでフリッカーの影響を低減して撮影することができます。
    この撮影タイミングを自動的に調整する機能が、フリッカーレス撮影機能です。

    シャッター方式によるスリット走行速度の違い

    フリッカーレス撮影機能は、メカシャッターおよびILCE-1の電子シャッター使用時に利用できます。
    一部の一眼カメラにはメカシャッターと電子シャッターの2種類のシャッターが搭載されていてスリット走行速度に違いがあります。
    ILCE-1以外の電子シャッターでフリッカーレス撮影を行おうとしてもスリット走行速度が遅いため、どのタイミングで走行をスタートさせても蛍光灯の明滅の暗部を避けることができないため、有効ではありません。

    メカシャッター スリット走行速度:速い(走行時間 約4ms)
    振動・音:あり
    電子シャッター
    (サイレントシャッター)
    スリット走行速度:ILCE-1を除き遅い(走行時間 数十ms)
    振動・音:なし


    電子シャッターの方が、高速に走行するイメージがありますが、実際はそうではありません。
    メカシャッターは単純に遮光のためだけに先幕と後幕が走行するので高速ですが、電子シャッターではイメージセンサーの1ラインを順にリセットすることで先幕の働きをさせ、それを順に読み出すことで後幕の役割をさせています。この読み出しに時間がかかるため、1ラインごとに全画面を読み出しするのに数十ms掛かります。
    このため電子シャッターのスリット走行時間は長くなります。しかし、ILCE-1では電子シャッターのスリット走行時間をメカシャッター並みに高速化しました。

    [フリッカーレス撮影]機能(静止画)のイメージ図

    [A]:フリッカーの周期(100Hz = 1/100秒、120Hz = 1/120秒)
    [B]:照明が明るいタイミング
    [C]:照明が暗いタイミング
    [D]:通常の撮影では照明が暗いタイミングでシャッターが走行すると画面の上下で露光するタイミングが異なるため、撮影画像の上と下で明るさや色が変化する
    [E]:フリッカーレス撮影では、フリッカーを検知し、明るいタイミングを見計らってシャッターを走行させるので撮影結果は良好になる

    フリッカーレス撮影機能は、蛍光灯などの100Hz/120Hzで明滅する光源にしか効果がありません。
    LED光源はスリットの走行速度の速いシャッターの走行時間(4ms)よりも短い数百~数千Hzの間隔で明滅していますので、カメラが明滅周期を検知できたとしても照明が明るく点灯している間でスリットを端から端まで走行させることができず、フリッカーの影響を低減する効果が得られません。

     

    • 蛍光灯の環境でフリッカーレス撮影した場合のイメージ動画

      蛍光灯の明滅の明るい期間(周期)で、シャッターが走行するため、蛍光灯下であっても良好な撮影結果が得られる。



       

    • LED照明の環境でフリッカーレス撮影した場合のイメージ動画

      シャッターはどのタイミングで走行しても明滅の周期が速いため、写真上では縞模様として写りこむ。


     

    [高分解シャッター]機能を使う

    LED照明下の舞台撮影でサイレント撮影(電子シャッター)を使用したいケースや、LED照明やLEDサイネージがある競技場でスポーツを高速連続撮影したいケースでは高分解シャッター機能でフリッカーを低減できる場合があります。

    この高分解シャッター機能では、フリッカーの周期とシャッタースピードをぴったりと合わせることで、フリッカーの影響を低減します。
    通常の1/3 step(段)または1/2 step 刻みのシャッタースピード設定ではフリッカーの周期と一致させることが難しかったですがこの機能を使ってシャッタースピードをさらに細かく調整し、フリッカー周期と一致させて影響を低減します。

     

    フリッカーの周期とシャッタースピードを合わせることで、フリッカーの影響が低減する理由

    イメージセンサーに結像した画像がシャッターにより順次取り込まれていく様子を以下に示します。

    [A]:画面の上端
    [B]:画面の下端
    [C]:先幕の走行軌跡
    [D]:後幕の走行軌跡
    [E]:シャッタースピード
    [F]:時間

     

    画像の上側から順次露光を行なうので、画像の下側とは露光タイミングがずれていることが分かります。
    このシャッターの走行図にフリッカーの明滅を重ねてみます。
    * 横軸は時間なので、下図の中では照明の明滅は縦の帯として表示します。

    シャッタースピードがフリッカーの周期と合っていない場合

    シャッターの走行図にフリッカーの明滅を重ねたイラスト

    シャッター速度が明滅周期と一致していない場合、露光中のあるタイミングでは照明が消灯または点灯しているため縞模様が写る。

    [A]:画面の上端
    [B]:画面の下端
    [C]:シャッタースピード
    [D]:時間
    [E]:撮影画像

     

    例:モニター上で縞が現れていれば撮影画像にも縞が現れることを示した画像


    • モニター画面

    • 撮影した静止画

     

    シャッタースピードがフリッカーの周期と合っている場合

    シャッターの走行図にフリッカーの明滅を重ねたイラスト

    シャッタースピードが光源の明滅周期とぴったり一致すると、どの露光タイミングでも照明が点灯から消灯して等しい明るさとなるため縞模様は現れない。

    [A]:画面の上端
    [B]:画面の下端
    [C]:シャッタースピード
    [D]:時間
    [E]:撮影画像

     

    例:モニター上で縞が見えなくなれば撮影画像にも縞がなくなることを示した画像


    • モニター画面

    • 撮影した静止画

    [高分解シャッター]機能を使ってフリッカーの影響を低減する

    [高分解シャッター]機能を使ってフリッカーの影響を低減するには以下の手順に従ってください。

    • 手順1. [高分解シャッター]を[入]にしてフリッカーの影響を確認する

      以下のカメラでの設定後、[高分解シャッター設定]の画面でフリッカーの影響が確認された場合、高分解シャッタースピードを細かく設定してフリッカーの影響を低減します。

      ご注意

      [高分解シャッター]を[入]に設定してもフリッカーの影響を確認し難い場合があります。事前に撮影をして確認することをおすすめいたします。

      1. カメラを設定する

      2. モニターでLED照明によるフリッカーの影響(縞模様)を確認。

        例:

         

        こちらの動画でフリッカーの影響(縞模様)を確認できます。この動画ではILCE-9M2を使って説明しています。

    • 手順2. 高分解シャッタースピードを細かく設定してフリッカーの影響を低減する

      • 自動で設定する場合(自動で設定できる機能が搭載されているカメラ)
         コントロールホイールの中央を押すと、フリッカーの影響が低減されるシャッタースピードに自動的に設定されます。

      • 手動で設定する場合

        例:高分解シャッタースピードを細かく設定して、LED照明によるフリッカーの影響(縞模様)が低減された。
        カメラの画面はILCE-9M2です。


        • LED照明の明滅周期とシャッタースピードが一致していないため、モニターに縞模様が見えている。

        • シャッタースピードの調整にともない、縞模様が変化している。

        • LED照明の明滅周期とシャッタースピードが一致したところで、モニターの縞模様が見えなくなった。

        LED照明の明滅周期とシャッタースピードが一致していないため、モニターに縞模様が見えている。




        シャッタースピードの調整にともない、縞模様が変化している。




        LED照明の明滅周期とシャッタースピードが一致したところで、モニターの縞模様が見えなくなった。

        こちらの動画でフリッカーの影響(縞模様)が低減する様子を確認できます。この動画ではILCE-9M2を使って説明しています。


      • 撮影
        シャッターボタンを押して撮影します。